大腸がん検査 内視鏡体験


秋の健康診断で大腸がんの再検査を勧められていた。検便で潜血反応が出た。先日、父を病院に連れて行ったついでに検査の日を予約する。秋の検査から半年。のんびりしすぎである。


ほんとに癌だったら・・・・という心配は、もちろんしていなかったわけではないが、検査そのものが憂鬱であった。バリウムを飲むより憂鬱。


検査日を予約した日に、検査のあらましは説明されていた。とにかく、お腹の中を空っぽにする必要がある。検査日の前日に食べるものを買わされる。三食分。和風がゆに中華がゆにポタージュスープ。「検査食」というのだそうだ。ハウス食品製。消化がいいというだけで、薬の類は入っていない。


つまり、検査の前日は一日、そういうものを食べて、「明日は検査だ」と考え続けなければいけない。とはいえ、勤めている人の差障りになるようなことはないだろう。必要であれば、ウィダーなどの補助食品を食べてもいい。むしろ、食べるよう病院で勧められた。


前日の夕方6時を目安に食べるにはおしまい。水分はお茶でもコーヒーでもできるだけたくさん取るようにといわれた。野菜ジュースなど繊維質を含んでいるものや、乳製品を含んでいるものは不可。水分の摂取に制限がないところがバリウムを飲むときとの違いのひとつ。喫煙に関する制限はなかった。この点もバリウムのときとは違う。


夜8時に粉末ジュース擬きの下剤をコップ一杯飲む。夜10時には錠剤の下剤。できるだけ「出せ」ということなのである。この段階の下剤は、そのさらに前日の分を出すためということらしい。当方は下剤の効きがあまりよろしくない。そういうこともあって、憂鬱度は増すのであった。


バリウムを飲むときには、前日の晩は食べても飲んでもいけないので、さっさと寝るに限ると思っているが、今回はだらだら起きていた。お腹が夜中にゴロゴロする。できるだけ出す。


朝もゴロゴロ。予約の11時半に合わせてボチボチ出かける。外は雨。


内視鏡検査室に受付が済むと、奥に通される。先客ふたり。テーブルに雑誌数冊と籠に入ったキャンディー。液体の入ったピッチャーがそれぞれに割り当てられる。薄めた下剤である。


「薄い塩味ですが、ほとんど味がありません。キャンディー舐めながら飲んでください」と看護婦さん。下剤は2リットル。30分で0.5リットルが目安という。それ以上ペースが速いとお腹が張ってしまうという。「ビールだったら、こんなのすぐですけどね」などという軽口は軽く受け流され、2リットルの液体との2時間の戦いが始まる。


文庫本をもっていっていたが、こういうときでもなければ読まない週刊誌やら情報誌などもペラペラ捲りつつ、あてがわれた大容量のマグカップに「塩味の水」を注ぎ込む。先客のお二人と差し向かいで、なかなかシュールな感じであった。


テーブルの上には「これはまだまだ」「もう少しです、がんばって」「こんな感じになったら検査できます」というように、段階を追った排泄物の状態のサンプル写真が示されている。2リットルも「塩水」を飲めば、すこし黄色に濁っただけの液体の状態になるという。先客のおじさんは「私はもう3リットルだけど、ダメでねえ」なんていっていた。


終わってから思うのだが、少しずつ飲むより、一気にたくさん飲んだ方がいいようだ。ちびちび飲まず、カップを一気に飲む。それでしばらく休む。まあ、この段階をあまり詳しく言わなくてもいいか。ダラダラと「塩水」を飲みながら、トイレに通う。とにかく、この時間が長く感じられる。雑誌は間がもたない。小説などをもっていくのがいいだろう。


2時間を過ぎて、2リットルは飲んでいなかったが、突然、便の色がなくなり、検査可能状態に。別室に通され、検査着に着替える。ワンピースの検査着の下は後ろ開きのだぶだぶパンツだけ。着替えながら、どんな恰好で検査をするのか想像したりする。分娩台状のものとか? まさか・・・


「処置室」に通され、普通の診察台のベッドに寝かされる。看護婦さんが点滴のための準備。生理食塩水と「腸の動きを抑えるための薬」が投与される。横を向いて寝ていると、目の前にはモニター。当方の名前がその上方に入っている。早速、担当の医師が現れ、「それじゃあ、始めます」


分娩台のようなところに座らせられるようなことはなく、上を向いたり、体の位置を変えることはあったが、基本的には寝ているだけ。ズボンの後ろ開きのところから内視鏡が操作される。強い痛みを感じるというようなことはなかった。


どういう器具であるのかは見なかった。モニターを時々眺める。透明な粘液が時々どっと画面に広がる。自分の内臓の中という感じが全くしない。素人目には非常にきれいな内臓。きれいではあっても病巣はあるのかもしれないが。いずれにしても、食物としての内臓をしばらく見たくなくなるだろうな、と思いながらも検査は進む。


急に明らかな病巣がモニターに現れたりしませんように祈りつつ、内視鏡はわが腸内を進んでいく。一度、小腸との境目まで突っ込んでから、戻りつつ検査するという。小腸の周りをぐるっと内視鏡は回っていくわけである。


「はい、最後のカーブです」


担当の先生が言う。この最後のカーブの辺りが面倒であるらしく、看護婦さんが当方のお腹を押して、腸の位置をずらす。やがて目出度く一番奥、大腸の入口に到達。


「水ちょうだい」と先生が看護婦さんに言う。検査を前に一息入れるのかと思ったら、いきなりお腹の中にひやっとした感覚。洗浄用の水であった。下剤がやや残っているらしく、それを洗い流し、吸い込みながら、検査は続く。一口に大腸といっても内側の形状は様々である。襞の具合いとか。自分の体のことではあるけれど、不思議なものだ。ホルモン焼き屋のおばさんにいろいろ内臓の名前を教わったときのことを思い出した。


時々、空気を入れて脹らませて検査する必要があり、その時は多少強めの痛みがあった。それ以外はあまり痛みを感じるようなことはなかった。ただ、結構長い時間、お腹の中で機械を操作されているという感覚はやはり気持ちのよいものではない。それから、横になっているときには感じなかったが、立ち上がってみると、腸に空気が入って上方を圧迫するせいなのか、胃が締め付けられるように感じた。看護婦さんに聞くと、「おならが出るまで、ちょっと苦しいかもしれません」


お蔭様で、癌ではなかったようだ。おそらく正式な結果をもらうときには腸の内部を撮った写真もくれるだろうと思うが、まあ、ここに載せるようなものではないだろうな。費用は検査食も含めると1万2000円くらいになった。やや高いかも。


車で帰る途中、車内で数発おならをすると、胃の痛みは治まった。とはいえ、消化器官にはほぼ何もない状態。何から食べたらいいだろう。まだゴロゴロ音をさせているお腹を抱えて考える。看護婦さんは特に注意すべきことはないといっていた。とりあえず、家に帰ってレトルトのインド風カレーを食べる。一気に消化器官に染み渡るのか・・・と思ったが、そういうことはないんだね。とりあえず、胃の辺りにまだ留まっているようだ。腸は相変わらずゴロゴロいい続けている。


この数ヶ月、すっかりツイッターに没入した日々を過ごした。別にツイッターをやめるわけではないのだけど、少し長めのものも書いた方がいいように思い始めている。検察審査会が小沢氏について「起訴相当」を議決した昨日、そう思った。