気がつけばドイツ

 

悪い冗談を見ているようだった。ドイツ・アルゼンチン戦。


準々決勝はブラジルが神経戦に敗れ、ウルグアイがなりふり構わぬ手を使ってベスト4をもぎ取った後、ドイツの圧勝。4点差。ちょっと冗談ではない。


ウルグアイ・ガーナ戦。


ミドルシュートで先制のガーナにフォルランのFKで追いつくウルグアイ。いい試合ではないか。と思ううちに、ここでソファーで寝てしまう。起きると延長戦。TV中継がNHK教育に移り、リモコンを探してまごまごしていると、切替わった画面は大騒ぎ。スアレスのハンドの直後。ガーナ選手が喜ぶなか、緊張した面持ちのギャン。


そこに悪戯好きの女神が登場してしまったわけだ。ギャンはPKを外し、退場でロッカールームに下がる途中のスアレスが狂喜する様がTVに流れる。そして、PK戦の末、ウルグアイが勝利。


オシム氏がPK戦をロシアン・ルーレットに喩えていた。誰かが「当る」まで続けなければならない「死のルール」。サドン・デスとはよく言ったもの。いずれにしても、スアレス、あのくらいヘッドでクリアしろよ。


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さて、ドイツ・アルゼンチン戦。


開始直後、呆気なくドイツが先制。その時から悪い予感を感じていた人はいたかもしれない。セットプレイではあったけれど。


メッシの動きは悪くないとしても、押え込まれている感じ。テベスがよく動くのはいつもと変わりはないが、決定的な見せ場もなし。イグアインもいいところなし。そんな中、ディマリアの動きが目立ったが、決定的なチャンスには至らず。なにか欠けていると思ったのは、エインセの攻撃参加。それだけ押されていたということだろうか。


とにかく、一進一退といったイメージは全くなしのドイツの一方的な試合。逆転を恐れて、守りに徹するなどということはない。「攻撃は最大の防御」を地でいく戦法。また、それが可能なチームである。エジルが縦横に走り回ってチャンスを作り、ポドルスキーケディラが繋ぎ、ミューラー、クローゼが待ち構える。さらにはラームのオーバーラップ。


勝利がほぼ確定的になって、VIP席からベンチそばまで降りてきたバラクの姿がTVに映る。何とはなしに所在なげ。手放しに喜べない面があったことは確かだろう。


ブラジルの敗戦は神経戦の末というイメージが残ったが、アルゼンチンは完敗だろう。メッシの不調とか、そういう話ではない。「バロンドールの呪い」はまだ続く。


「気がつけばドイツ」というのは、「スペインのガラスの心臓」と同様、よく言われていることで、前評判は高くないのにいつも上位に食い込むドイツ。期待は高いのになかなか優勝できないアルゼンチン。組織力と統制のドイツ、自由のアルゼンチン。わかっちゃいるけどアルゼンチンに賭けてみたくなるってことではある。そして、また夢破れ。


クローゼ通算ゴール14点めで史上二位。ゲルト・ミュラーと並ぶ。ロナウドを抜くか?