溜まったコピーの保存法  

  

先日「つづく」としてあった「紙」の話。


本が多くなってしまって、処分に困っているという話はよく聞く。当方はそういうことはあまりなくなってしまった。文庫本をBookOffで買っては売るというのが中心になったせいだろう。前は結構、本を買う方だったと思う。


それはそうと、「紙」のこと。紙が溜まる。仕事柄、出版までの過程に出る紙が送られてくる。校正ゲラなど。これを送り返さないことが多くなってきた。カラーコピーが安くなったのも一因らしい。こちらはPDFなどでメールに添付して納品する。


校正ゲラの裏は白紙。こういう紙はなかなか棄てられない。仕事が少なかった頃はこれを様々に使っていたが、大きな仕事をひとつしたときに出た校正ゲラの量は尋常ではなかった。今も部屋の片隅に積まれている。高さ80センチくらい。


まあ、棄てればいいのだけどね。結局のところ。


それとは別に棄てられない紙が段ボール箱に10箱近く部屋には積まれている。多分、そのうちのいくつかには本も入っているだろうと思うが、基本的には「紙」。厳密に言えば、コピーした紙。


一冊の本をコピーしたものはほとんどなく、あちこちの雑誌論文をコピーしたもの。日本では入手が難しいものもあるが、こういうものは研究分野との関わりがなくならない限り、捨てられないものだ。そう、ある研究分野との関わりがダラダラと続いているのである。一時期なくなりかけたので、棄ててしまおうと思っていたところ、また関係が戻ってしまったという、やや面倒な関係。


……そういう愚痴を言おうと思っていたのではなかった。


年に一度、アメリカの大学を訪れる大学教授の先生が言っていた。


「最近、アメリカの大学にはコピー機、ないんだよ。写真に撮れって言うんだ」


どこまで本当かはわからないが、引っ繰り返してコピー機のガラス面に載せるという行為は本を傷めるのは間違いなく、図書館がその行為をやめて欲しいと思うのは理に適っている。著作権上の問題のことも考えてみたが、コピー機でコピーしていいものを写真に移しても問題は生じないだろう。デジカメの性能は年々向上しているし、コピーをする時間と比べたら写真に撮った方が格段に早いのはやってみればすぐにわかる。しかも、写真ならカラーだ。


ある仕事に関わっていたとき、古い資料の保存方法が問題になった。貴重な資料ではあるけれども、保存に金をかけられない。原本の保存状態は今は悪くはないが、この状態を続けられなくなる可能性もある。とにかく内容だけは保存したい。


このとき、先の教授の話を思い出して、アルバイトを雇い、書見台と三脚と一眼レフのデジカメを与え、その資料をとにかく撮影してもらったのであった。数千枚あったと思われる資料は結構な早さでデジカメ写真としてハードディスクの中に保存されたのであった。


その事務所にはコピー機があり、スキャナー機能も設定してあったので、フィーダーにかけることができれば、そのようなことはしなくてもよかったのだが、その資料は古い書類で、非常に薄い紙に清書されていた。今はもうほとんど見ることはないが、昔の事務所の書類というのはそういう紙だった。「清書屋」みたいな会社がオフィスビルには必ずあったそうである。その紙はおそらく一般的なコピー機のフィーダーでは上手く送ることができなかっただろうと思う。やればできたかもしれないが、同じ薄さの紙が事務所にはなく、実験はできなかった。


そういうわけで、書見台と三脚をセッティングして、次々に資料を捲ってはシャッターを切るという方法をとったわけだ。


本をバラして、フィーダー付きのスキャナーにかけるというのが流行っているらしい。そういうことを請け負っている業者もいると聞く。段ボール箱の中の雑誌論文もそういう手段でデジタル化できるのは言うまでもない。ホチキス部分をカットすれば、そのままフィーダーに入れられる。スキャナー機能付きのコピー機のある事務所でバイトをしているうちに少しずつやっておけばよかったとつくづく思う。あれでやれば、非常にはやい。


しかし、今はその機会もない。フィーダー付きのスキャナーも買えない。あるのはある程度以上の性能をもったデジカメとハードディスクの空き容量。


着手すれば、進んでいくだろうが、なかなか着手する気になれない。着手したら、また報告することにしよう。